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Friday, 04 July 2008

しあわせな時計。

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まだ寒い、1月のこと。

たまたま、TVのニュースをつけていたら、阪神大震災で大量の壊れた時計を扱った経験から、思い出詰まった時計をできるだけ直してあげたいと、修理に情熱を注いでおられるという、兵庫県姫路市の永浜時計店さんの話題をとりあげていました。

修理に対するあたたかい想いと、修理に持ち込んだ時計が動くようになって、うれしそうにそれぞれの家に帰っていく様子を想像して、ニュースを見ながら、感動して泣いていたら旦那にえらくびっくりされたりしたのですが。

私にも、直して欲しい時計がひとつあったのです。

それは、私の祖母の腕時計ですが、母が「もう動かないけど」と私にくれたもので、きゃしゃなブレスレットタイプのものです。

決してどこかの高名なブランドのものではありませんが、”SWISS”と、なんともいい感じの字体で刻まれたクラシカルな文字盤がとっても気に入っていたのです。

動かないのは惜しいなあと、百貨店の時計修理コーナーに見せに行ったら、部品が壊れているので無理ですね、と宣告されていたものでした。確かに内部でからんからんと、何かが折れているような音がしています。

ニュースを見て、とにかく時計を診てもらおうと、旦那に頼んで車で姫路まで連れて行ってもらいました。
お店に着くと、白衣をお召しになった時計のお医者さん、永濱さんがおられました。
とても優しく微笑んで、「大丈夫。直りますよ。」と声をかけられ、また泣きそうになりました。

やっぱり中の部品が折れているそうですが、その部品を作ってくださるそうです。そして、修理待ちの時計たちが山のように並んでいて、時間をくださいねと言われましたが、直ってこの時計を使えるようになるのなら、いつまでも待ちます!と喜んで預けてきました。

それから待つこと数ヶ月、直りましたよとお電話をいただき、また旦那に車を出してもらい、時計を受け取ってきました。

文字盤もケースも綺麗に磨いてもらい、何よりも規則正しく刻む機械の音が聴こえ、修理の様子と中に収められていた部品たちの写真つきの永濱さんのお手紙を何度も何度も読み返しました。

それから早速、元気になった時計をサプライズで祖母に返しに行きました。

そうしたら、この時計にまつわる、すごい思い出話を聞くことになりました。

戦後何年か経ち、祖母が初めて大きな買い物をしたのがこの時計だったそうです。それでとても大切に使っていたのですが、ある日大阪駅に知人を見送りに行くことになりました。列車の時間が近づき、あわてて階段を駆け上がっていたら、しばらくして腕に時計がないことに気がつきました。でも時間が迫っていて、駅は混雑しているし、引き返すことができなくてそのまま見送りに行き、帰りに辺りを探したけれど、もう見当たらなかったのです。

たいそう落ち込んで家に帰宅したけれど、祖父にもそのことをとても言い出せず、しばらく胸にしまっていて、他の時計を買って忘れようかと思ったけれど、それ以上に気に入るものがなくて、忘れられずにいたそんなある日の夜。

夢に時計が出てきたそうです。
暗いところで時計が「早く迎えに来て・・・」と泣いている夢。

その翌朝、思い切って祖父に時計を失くしたこと、昨晩の夢のこと、全部話したら、祖父が「なぜ早く言わん」と早速大阪駅に電話したそうで。そうしたら、それらしきものが届いているので見に来てくださいと。

結局、その日、駅員さんが落ちている時計を保護してくれて、忘れ物として預かられていたそうです。無事に祖母のところに戻ってきた、というお話でした。

またまた、そんな話を聞きながら大泣きしている私。

そんな思いをした時計ならなおさらだ!動くようになったし、ほら、おばあちゃんまた使って!と渡そうとしたら、おばあちゃんが持ってももう似合わないから、かわいがってあげてと私にくれました。

私がいつまでも大切にするね。
そしていちばん聞き分けのいい孫に、今のお話つきでいつか託すことにするね。

ちなみに永濱さんは、数々の賞に選ばれておいでですが、「現代の名工」のおひとりでもあります。現代の名工、といえば万年筆の長原さんもだなあと思っていたら、ともに紹介されているページがありました。もうひとり紹介されている一澤信三郎さんの帆布かばんも大好きなので、とても親しみのある顔ぶれが揃ったページです。

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Comments

良い話ですね。
あまりに良い話なので、どのようにコメントしてよいのか分からず、しばらく迷っていました。

私も、メーカーから見放された時計を修理してくれる人を知っています。
とても穏やかな人です。

良い話をありがとうございました。

Posted by: royalblau | Friday, 29 August 2008 12:44 AM

時計って本当に不思議ですよね。
その時その時の人生にいつも寄り添っている存在のような気がします。

また、こういう修理に携わってくださる方は、修理を依頼した人が時計と一緒に持ち込んだ思い出まで一緒にあずかってくださるような、そんな心優しい方が多いのかもしれませんね。だからこのような時間と手間のかかる仕事を引き受けてくださるんでしょうね。

Posted by: はるる | Friday, 29 August 2008 11:19 AM

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